


思っていたより小ぶりな「松本城」は、ちょっと寸胴な風貌がかわいらしい。漆黒の城壁は上品な重厚感と柔らかな温かみを感じさせ、どこか女性的な印象さえ覚えます。背後には北アルプスを従えるという絶好のロケーションの中にあり、城を取り囲むお堀に映り込む姿も絵になるニクイやつです。
しかし、この“松本の宝”は、まるで手がかかるお嬢様のよう。今もなお、漆塗り職人によって塗り替え作業が行われており、その美しさを維持するにはとにかく手間がかかります。しかも築城当時の姿がそのまま残されているため城内の階段は急で狭く、すれ違うのも一苦労。それでも長きに渡って愛され続ける「松本城」。ちょっとだけうらやましくなりました。



(上) 「松本城」は、国内4カ所の国宝城郭の一つ。五重六階の天守閣を持つ城の中では日本最古の城だ
(左) 内堀の外側までは入場無料となっている。4月下旬になると遅めの桜が咲き誇るなど、四季折々の樹木や植物が彩りを添える

漆黒の中に赤い埋橋(うずみばし)が一本。お嬢様が紅を引いたら少しだけ艶っぽくなるように、漆黒の城郭もキリッと引き締まる