


松本城から歩いて約10分、伊藤石材店2Fにある不思議なギャラリー「自遊石」。石材店五代目の伊藤博敏さんが作るシュールな石のオブジェの数々が、ズラリと並んでいます。自然石の風合いを生かしたアートは、「石だけど石に見えないパラドックス」をコンセプトに、おいしそうな料理や柔らかなセーター、身の回りのものはもちろん、歯をむき出しに笑いかける石も。アパルトヘイトや戦争など社会風刺を込めた作品もあり、ファスナーの内側と外側を舞台にウイットに富んだ世界を描き出しています。本業で狛犬や墓石を作りながら、「石の可能性を伝えたい」という伊藤さん。日本のみならず、世界中から注目を集めている石たちが、何かを教えてくれるひとときです。


卵のようなフォルムの石のファスナーが少しずつ開いて、中から羽が飛び出している。「ファスナーを全部開けたら!?」と物語を想像させるところがおもしろい


(上)湾岸戦争を舞台に銃を手にした男たちとミサイルに水を掛ける女たちを描いた「世紀末のお片付け」。ファスナーを締めれば戦争は終わるという風刺を込めた
(左) ヘッドフォンをジャックに差し込むと音楽を聞くことができる「Rock in Rock」。各作品のネーミングにも伊藤さんの遊び心が表れていて、楽しませてくれる