カーン、カーンと銅板をたたく音が響きわたる「玉川堂」は、国の無形文化財に指定されている鎚起銅器の工房です。鎚起銅器とは、一枚の銅板を金鎚や木鎚でたたいて作る器のこと。なんと約200種類の鎚を使い分けて、美しい形を作っていくといいます。また、独自の銅の彩色技術は世界でも高く評価されているそう。その色合いは使えば使うほどに光沢を増していくことから、日常使いの器として使用するのもお薦めです。特にこの器でお酒をいただくと、銅イオンの働きによってまろやかな味になるといわれています。さらに、熱伝導が良い銅製品は、好みの温度を保つこともできるとあって、左党にはたまりません。好みの酒を最高の酒器で味わってみませんか?
(上)手にとってみると、鎚でたたいた無数の跡が分かる。一振り一振りで刻まれた柔らかな文様に触れ、その見事な匠の技に感服
(左) 登録有形文化財に指定されている「玉川堂」のる門構えは、築100年の風情たっぷり。ここをくぐると作業場から銅板をたたく音が聞こえてくる
一人の職人が一つの器を作り上げていく。“たたいて伸ばす”のではなく、“たたいて縮める”のだそう。設計図などはなく、寸法などはすべて職人の頭の中にある