


山鹿千人灯篭、山鹿温泉で知られる熊本県山鹿市に、毎年、坂東玉三郎が訪れて公演を行っている芝居小屋があります。道端にたくさんののぼりがはためき、軒下には赤いちょうちんが行儀よく並んでいます。そんな芝居小屋の前に立つと、明治華やかりし時代の賑やかな音が聞こえてきそうです。
今となっては珍しい芝居小屋の造り。それが、今なお現役であることに驚かされます。舞台に向かって軽い傾斜を帯びている枡席に寝転んで、天井に描かれているカラフルな手描き広告を眺めるのが楽しみの一つだったと、地元のお年寄りが語ってくれました。さっそく寝転んで見てみると、目の前に広がるのはモダンで華やかな世界。昔ながらの “楽しみ方”が「八千代座」の魅力を教えてくれました。


屋根瓦に白壁、木造の佇まいは貫録があり、しばし見惚れてしまう。「八千代座」界隈の風情あふれる「豊前街道」は、歩いて散策するもよし、人力車でめぐるもよし


(上) 1階客席は桝席(ますせき)と桟敷席からなっており、両サイドには花道。桝席は後方でも見やすいよう舞台に向かって勾配が付いており、建築当時としては珍しい造りとなっている
(左) 毎年2月には、毎週金・土曜に竹明かりが街を彩る「山鹿灯籠浪漫 百華百彩」が開催され、「八千代座」では山鹿灯籠踊りなどが披露される。平成23年は3月まで延長(ただし八千代座での公演はなし)