
静岡
地魚・地酒 車や
「紅を染め付けたような金目鯛。
これは白い大トロだ」
静岡に到着したら、御前崎で水揚げされた天然の金目鯛を食べようと、JR静岡駅近くの常宿に荷物を放り込み、すぐに昭和通りの『地魚・地酒 車や』へ駆け込んだ。
カウンターにずらりと並ぶ大皿料理に吸い寄せられるように席に着き、さっそく金目鯛の姿煮を注文。胸ポケットの財布をポンと叩いて、「一番大きなやつね」と声を張った。
鉢盛りの料理と刺し身の盛り合わせをつまみながら、まずは地酒『喜久酔』を一杯傾ける。厨房では職人かたぎの大将が寡黙に鍋の前に立つ。いいぞ、旨そうな匂いが漂ってきた。待つことしばし。ほどなく湯気を上げながら待望の金目鯛が現れた。
紅を染め付けたように鮮やかで艶々と輝く皮目。飾り包丁が入ったはち切れんばかりの身が、早く早くと箸を誘う。肉厚な白身をほろりと外して口に放り込むと、舌の上でとろん。まるでサシの効いたトロのように上質な脂身が口に広がる。「これは白い大トロだ!」。
ひと口、またひと口。次は煮汁を含ませて……と、見る見るうちに半身が消えた。旨味を吸い込んだ付け合わせのゴボウが白飯をせがむ。無言で箸を進める客に、寡黙な大将が破顔一笑。「駿河湾は桜エビからノドグロまで、季節ごとにさまざまな魚が水揚げされる宝庫です。年中捕れる金目鯛にも旬があって、一番脂がのるのは4~6月。まさに今走りですよ」と教えてくれる。
煮汁まで愛しく思える一品を前に、思わず「ご飯! 山盛りで!」と気勢を上げた。

静岡
地魚・地酒 車や
- 住 所
- 静岡県静岡市葵区常磐町2-2-16
- TEL
- 054-255-5004
- 営業時間
- 17:00~22:00
- 定休日
- 日曜
※記載内容はFDA機内誌「DREAM3776」Vol.18号(2017年3月発行)掲載時のものです。