
静岡
銀太
「由比で出合った
幻のあじ」
桜エビのまちとして名高い静岡県の由比に、東京や名古屋の食通が“幻のあじ”を求めて足繫く通うすし屋があるという噂を聞いてやって来た。
『銀太』は、由比で唯一のすし屋。この店に来て、名物・倉沢アジで握る『鯵にぎり』を注文しない手はない。丸ごと一匹を半身は刺し身で、もう片方の半身はにぎりでいただく。これに加えて、桜エビの刺し身とかき揚げ、『沖あがり』を注文すれば、由比スペシャルすし呑みセットの完成だ。
由比倉沢のアジは『根付きアジ』とも『底付きアジ』とも呼ばれ、回遊をしないので身はぶ厚く脂ののりがよい。まずは刺し身をいただこう。青魚特有の臭みはなく、もっちりとした食感で、舌に絡む脂がほんのりと甘い。北国の白身魚のようでもあり、トロのようでもある。訊けばこのアジ、捕れたてではないという。目と鼻の先にある由比港から直接店に運ばれてきた魚の内臓を素早く処理し、寝かせること一週間強。魚の旨味成分が出たころが一番旨いらしい。内臓を付けたまま翌日の市場に出た後では手遅れで、どうしても臭みが出てしまうのだとか。「由比ではこれが当たり前。だから、うちでは捕れたての魚は出さないよ」と胸を張る店主。
“幻のあじ”は、港町由比のすし屋だからこそ出せる“幻の味”だった。






静岡
銀太
- 住 所
- 静岡県静岡市清水区由比今宿165
- TEL
- 054-375-3004
- 営業時間
- 月・水・金曜11:00~14:00、火・木・土・日曜11:00~20:00
- 定休日
- 不定
※記載内容はFDA機内誌「DREAM3776」Vol.12号(2014年10月発行)掲載時のものです。