のみすけ

毎日市内の八百屋から仕入れる『十全ナスの漬物』486円。好みで辛子をつけていただくのが新潟流。ビールの次は、もちろん地酒で!
「新潟の夏の晩酌は十全ナスで
幕を開ける」
美味しい酒と肴の宝庫、新潟の夏の定番がナスであることは意外と知られていない。中でも夏から秋に出回る『十全ナス』は「よそ者に分けたくない」と言われるほど旨く、県外にはほとんど出回らないという。
それは聞き捨てならんというわけで、新潟きっての繁華街、古町の路地裏に暖簾(のれん)を掲げる『のみすけ』に飛び込んだ。
座るや否や、『十全ナスの浅漬け』とビールを頼む。「お客さん、新潟の人?」とのうれしい質問に、にやりと笑ってグラスを掲げる。いやいや油断は禁物、『十全ナス』にありつくまで予断は許さない。
さあ出てきた。ひと切れ頬張ると、水分が零れ落ちそうになり、慌てて口元をぬぐう。艶めいた紫色のナスのみずみずしさは、朝採りのナスを浅漬けのまま夕刻に食べるこの土地の成熟した食文化を雄弁に物語る。
ピンと張った皮をかんだ瞬間、果肉に沁み込んでいた汁が溢れ出した。普段口にするナスとは明らかに違う弾けんばかりに詰まったジューシーな果肉。そして浅漬けの塩気とほのかな甘味、口に残る少しのえぐ味が織りなす超絶のハーモニーにしばし呆然とする。
こりゃあ県外に出回らないわけだ。深く納得しながら2杯目のビールをぷっはーと一気に呑み干した。
新潟の夏の晩酌は、とにもかくにも十全ナスで始めるに限る。

浅漬けと並ぶ新潟の夏の定番『黒埼茶豆』756円。朝採りの豆をゆでてすぐ冷やすことで甘味が凝縮。店主、齋藤さんこだわりの粗塩が豆の風味を引き立てる。

路地裏にありながら、店内は広々。カウンターに座敷、2階席もある。店主が吟味した旨い地酒と地魚、そして郷土料理が自慢だ。
住所 | 新潟県新潟市中央区古町通8-1444 |
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TEL | 025-224-1710 |
営業時間 |
18:00~翌3:00 |
定休日 | 日曜 |
※記載内容はFDA機内誌「DREAM3776」Vol.16号(2016年7月発行)掲載時のものです。