和風味処 まつい

「新潟の食はこの人に訊け。
“板前女将”の店、ここにあり」
新潟市の繁華街。古町から少し離れた路地で、宵闇に浮かぶ濃紺の暖簾(のれん)と『まつい』の文字が目に留まった。出入りする常連らしき客の笑顔につられるように暖簾を潜る。
店内にはカウンター席が8席。奥の小上がりは先客で埋まっている。カウンターの上には、旨そうな大皿料理がずらり。席に着くと「さっと召し上がれるものから出しましょうか」と、小柄ながら背筋のシャンとした眉雪の女将が誘ってくれる。
ほどなく色鮮やかな『かきのもとの和え物』に続いて、フナベタ、南蛮エビの刺し盛りと新潟名物がテンポ良く供される。どの料理も丁寧な仕事による上品な味だ。訊けば御年75歳の女将は、若いころから厳しい料理修行を経て、43年前にこの店を始めたという。
「かきのもとは酢でさっと茹でなきゃダメ」。
「阿賀町の室谷地区で採れるゼンマイが全国の価格を決めるのよ」。
女将の豊富な知識と軽妙な話術に胃袋が刺激され、食と酒が進むったらない。
「新潟の食はこの人に聞けば間違いないよ」と、近くに座っていた先客も混じって愉しい食談義が続く。
今宵は楽しくなりそうだ。

シャキシャキの食用菊に山菜のミズの実、クルミを散らした『かきのもとの和え物』486円。

日によって内容が変わる『刺身盛り合わせ』1,620円~。左からブリ、フナベタ、スダチでいただく南蛮エビ。

ちまたの高級料亭では幻とも称される里芋の帛乙女、タラの卵、銀杏の『炊き合わせ』918円。

住所 | 新潟県新潟市中央区上大川前通6-1212-2 |
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TEL | 025-229-5693 |
営業時間 |
17:30~22:30 |
定休日 | 不定 |
※記載内容はFDA機内誌「DREAM3776」Vol.17号(2016年10月発行)掲載時のものです。