松本 仙洛

細めの平たいそばはコシがあり、つるつるっとした喉越しで、かけそばとは違ったそばを楽しめる。「とうじそば」1,365円（二人前から）、年中食べることができる

　松本市の奈川地区にはおいしいそばの食べ方があります。かつて米が採れなかった奈川で、客人をもてなすための料理だった「とうじそば」です。鳥肉やキノコ、山菜、根菜を煮込んだ温かな鍋に、小分けにしたそばをその都度「投じ」ながら饗するというもの。家族で切り盛りする「仙洛」の「とうじそば」には、店主自ら山に入り採ってきたキノコがどっさり入ります。採れたものがそのまま鍋に入るので、秋にはマツタケが味わえることも！このもてなしの気持ちがうれしい限りです。何にもない贅沢を実感できる、“温～かいおそば”を味わえます。

「そばやきもち」420円。もちもちのそば団子の中に、甘みと爽やかな香味が相まったえごまの餡。香ばしい焼きたてをいただきたい

　奈川は、険しいカーブをいくつも回り、標高1000mまで登った岐阜との県境近くにぽっかり現れる山深い集落です。映画「あゝ野麦峠」の舞台にもなった野麦峠はここにあります。「なぁんにもないところだからね」と店主は微笑ますが、その温かい笑顔がすでにごちそうです。毎日仕込むそばは、完全手打ち。艶やかで美しいそばの姿を見れば、さもありなん！丁寧な仕事ぶりが伺えます。昔ながらのそばのおやつ「そばやきもち」も、ぜひ味わいたいものです。毎年10月1日～11月3日に奈川で開催される「新そばまつり」もお薦めです。