熊本 四季の味 むら本

さまざまな山菜を盛り込んだ「昼の山菜のにぎり寿司コース」 2,500 円。山菜と薬味の組み合わせは、店主によるその日のインスピレーション。同じ食材でも味わい方は多彩だ

　阿蘇の大自然と湧水がはぐくむ四季折々の産物といえば“山菜”。それを握りずしに仕立てて、旬のうまさを引き出す粋な店に出合いました。店主が朝露を踏み分けて摘む新鮮な素材には、シンプルな下ごしらえを施すのみ。そこには独特の風味や苦みなど、大人だけが分かるうまみを際立たせる秘訣があります。ウド、ミョウガの茎、フキ、ノビル、オクラなど素材の歯応えや持ち味を生かし、カボスや梅肉、シソの実などを薬味に添えた合わせ塩で味わう、ありのままのどこか懐かしい山のごちそうです。

デザートは「トコロテンの黒蜜かけ」。さらりとした黒蜜をかけた手作りのトコロテンに、敷地内で摘んできた野イチゴをトッピング

　江戸前握りずしの職人である店主が、この地の自然の素晴らしさに魅せられて店を構えたという「四季の味 むら本」。敷地内で採れる野草や山菜からは、際限なくアイデアが浮かぶそうで、身近な素材を即座に握って客に出すことも珍しくありません。見た目にも美しいフジやアジサイなど、季節の花を使った美しい料理を味わえるのも魅力の一つ。食に驚きと豊かさをもたらしてくれます。木立ちに面したテラス席で味わえば、「こんなぜいたくな過ごし方があったのか」と、日々の喧騒さえ忘れてしまいそうな心地よい時間が流れます。