岩手 居酒屋 美藤

「イカのふ刺し」（1人前）150円。凍らせたイカの“ふわた”のスライスには、まろやかなヒマラヤ岩塩を好みで削っていただくおしゃれな一品

　盛岡城三の丸跡に立つ古社「桜山神社」の向かいに伸びる小路へ入ると、趣きのある横町が広がっています。その中に佇む「居酒屋 美藤」は、戦後間もなく創業したという老舗です。周囲には岩手県庁や新聞社、放送局などが点在しており、仕事帰りの人々が家路に着く前にちょっと立ち寄る行きつけの店として、長く愛されてきました。郷土の味が並ぶ中で注文したのが「イカのふ刺し」。半解凍したイカの肝脂のことで、舌の上で溶かしながら食す酒のアテにぴったりの一品です。秋から冬には秀逸という濃厚な脂の風味を堪能することができます。

「自家製もつ煮」（1人前）490円。やわらかく煮込んだもつの他にも野菜がたっぷり入った体に優しいメニュー。好みの薬味でいただこう

　岩手といえば、獲れたての魚介類を四季折々に楽しめる海の幸の宝庫。黒板に書かれた「タコの唐揚げ」や「イカ一夜干し」などがそれを物語っています。常連さんが次々に注文するメニューの中には、「自家製もつ煮」や「温卵付き牛アキレス煮込み」など、手間暇と時間を掛けて作る煮込み料理も多く、酒の肴にというよりも、ゆったりとくつろぐ酒の“お伴”といった風情。濃厚なみそがじっくりとしみ込んだもつ煮に合うと、店長がすすめてくれた一杯は、岩手の地酒「鷲の尾」。まったりとした甘さの個性的な味わいは、煮込み料理によく合います。