「こんなに旨いイカを食べたのは、
相当さかのぼっても記憶にない」

博多駅から徒歩約5分のところに、玄界灘のイカを生きたまま刺し身で食べさせてくれる店があるという。しかもそこで出されるヤリイカは、漁師が一本一本丁寧に釣り上げたもの。そう聞けばもう、行くしかないではないか。

週末のゴールデンタイムに店を訪ねてみると、活気がすごい。店内には魚屋かと見まがうほど広いいけすがあり、周囲には大漁旗が翻っている。

混みあう中でなんとかカウンター席を空けてもらい、早速『釣りヤリイカ一本槍』の刺し身を頼んで、生ビールで乾杯。料理を待つ間、店内のいけすを泳ぐ活きた魚を眺めてみる。タイ、アラ、ヒラメ、磯オコゼ、伊勢エビ、ウチワエビ……。福岡の海、玄海灘が国内屈指の漁場なのだとあらためて感じ入る光景だ。

そうこうしているうちに、お目当ての動くイカが登場。シュッとしたそのフォルムは美しく、透き通った身は光を帯びてキラキラと輝いている。イカ用の甘めの醤油を付けていただく。一口運んでみると新鮮な身はコリコリの食感で、噛めば噛むほど甘味が追っかけてくる。こんなに旨いイカを食べたのは、相当さかのぼっても記憶にない。

ありがたいイカの顔にちょっとレモン汁を搾ってみると、これまたクネクネと動いておもしろい。最後はゲソを天ぷらにしてもらって完食。

福岡の“動く夜”は旨かった。